1607年(慶長12年)の2/20に、出雲の阿国(おくに)が江戸城で初めて徳川家康らの前で「かぶき踊り」を披露したといわれていて、本日は歌舞伎の日としても制定されています。
他にも様々な記念日の中から「歌舞伎の日」を選んだ理由は、映画「国宝」を紹介したかっただけです(笑)
去年の話題作だったので記憶に新しいとは思いますが、この映画で本当に日本の伝統芸能のすごさに感動させられました。
まずは、本題の映画紹介から。
映画のあらまし
本作は、吉田修一氏による渾身の長編小説を、名匠・李相日(リ・サンイル)監督が実写化した、日本映画界の覚悟を感じさせる大作です。歌舞伎という「伝統」の重圧と、その中で芸に魂を売った者たちの凄絶な生き様を描いています。
物語の舞台は、戦後から平成にかけての歌舞伎界。生い立ちも才能も対照的な二人の若者が、歌舞伎の頂点である「国宝」を目指す一代記でございます。
- 喜久雄(きくお): 吉沢亮さんが演じられます。任侠の家に生まれながら、その美貌と執念で歌舞伎の世界へ飛び込み、孤独に芸を磨き上げる男。
- 俊介(しゅんすけ): 横浜流星さんが演じられます。名門・丹波屋の御曹司として生まれ、恵まれた環境にありながら、喜久雄という強烈なライバルの出現に苦悩し、自らの芸を模索する男。
血筋か、切磋琢磨か
物語の舞台は戦後から現代。長崎の任侠の一家に生まれた喜久雄(吉沢亮)と、歌舞伎の名門に生まれた俊介(横浜流星)。 生い立ちも対照的な二人が、同じ師匠のもとで競い合い、芸の道という「修羅の道」を突き進みます。単なる友情物語ではなく、相手の存在が自分を極限まで追い込む「鏡」のような関係性が、全編を通して緊張感を生んでいます。
圧倒的なリアリズムと映像美
李相日監督といえば『悪人』や『怒り』で見せた、人間の内面を抉り出すような演出が特徴ですが、今作ではそこに「様式美」が加わっています。
- 徹底した役作り: 吉沢亮さんと横浜流星さんは、撮影前から長期にわたる踊りの稽古を積み、劇中の舞台シーンを吹き替えなし(あるいは極限まで本人)で演じています。
- 「女方」の表現: 特に吉沢亮さんが演じる喜久雄の、男であることを捨てて「女」を演じる凄艶さは、スクリーン越しでもわかると思います。
注目ポイント
この映画の真のテーマは、タイトル通り「何が人間を国宝(至宝)たらしめるのか」という問いにあります。
宿命との戦い: 「極道の子」という出自を背負う喜久雄と、「名門の重圧」に苦しむ俊介。二人が舞台の上でだけ解放される瞬間のカタルシスは、他の邦画ではなかなか味わえません。
芸に食われる人生: 家族、恋、安らぎ……それらすべてを犠牲にして、ただ一つの「至高の芸」に到達しようとする狂気。
ここが見どころ「役者の魂」
圧巻の舞踊シーン
吉沢さんと横浜さんは、撮影のために一から数年がかりで踊りの稽古を積まれたとそうです。腰の入れ方、指先の震わせ方ひとつ取っても、凄まじい気迫がスクリーンから伝わるはずです。
女方の美学
特に「女方(おんながた)」を演じる際の、あの独特の虚実(きょじつ)の皮膜。男が女を演じるのではなく、「女以上に女らしい理想の姿」を追い求める狂気。それを現代の若手実力派俳優がどう体現するのか、実に見ものです。
芸と宿命
「芸のためなら親の死に目にも会えぬ」という言葉がありますが、この映画はまさにそれ。血縁という「呪い」と、芸という「救い」の間で揺れる人間ドラマは、涙なしには観られません。
「芸は盗むもの、そして命を削って捧げるもの」 この映画を観れば、普段ご覧いただいている歌舞伎の舞台裏に、どれほどの執念が渦巻いているかを感じるはず。
襲名
投資や資産運用に関心をお持ちであれば、この映画で描かれる「伝統芸能の継承と経済的基盤」という側面も興味深く映るかもしれません。芸を維持するための莫大な資金と、それを支えるパトロンたちの関係性も、物語のリアリティを支えています。
監督について
監督もお名前から海外の方だと思いきや1974年生まれ、新潟県出身の在日コリアン3世。日本映画学校(現・日本映画大学)の卒業制作『青〜chong〜』で注目を集め、以来、数多くの映画賞を受賞された方だったのですね。代表作をみてもどれも見たことのある物ばかりでした。
代表作
| 公開年 | 作品名 | 概要・評価 |
| 2006年 | フラガール | 廃れゆく炭鉱の町でフラダンスに挑む少女たちの姿を描き、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した大ヒット作。 |
| 2010年 | 悪人 | 殺人を犯した男と、彼を愛した女。人間の善悪の境界線を問うた衝撃作。キネマ旬報ベスト・テン第1位。 |
| 2013年 | 許されざる者 | クリント・イーストウッド監督の同名作を明治初期の北海道に舞台を移してリメイク。渡辺謙主演。 |
| 2016年 | 怒り | ある殺人事件をきっかけに、信頼と疑念に揺れる人々を豪華キャストで描いた群像劇。 |
| 2022年 | 流浪の月 | 広瀬すず、松坂桃李主演。誘拐事件の被害者と加害者というレッテルを貼られた二人の、魂の結びつきを描く。 |
| 2025年 | 国宝 | 吉田修一の最高傑作を実写化。歌舞伎の世界に命を懸ける男たちの生き様を、圧倒的な映像美で描いています。 |
逃げ場のない状況に置かれた人間が、どのように自分と向き合い、他者と関わるのかを執拗なまでに描き出すのがうまい監督さんだというのがわかります。
今回の『国宝』でも、単なる芸能界の裏側を描いた作品ではなく、「何かを極めるということは、人間を辞めることなのかもしれない」という、芸術の本質に迫る残酷で美しい物語に仕上げています。
この映画は、上映時間2時間54分とそもそもが長いのですが、長いという感覚はなくあっという間に終わっている感覚でした。情報量も多いのでやはり2回以上観ないとかみ砕けない部分が出てくるのもわかります。
見る視点によっても色んな答えがあるので、観終わった後に一緒に観に行った方とのレビューも楽しいだろうし、ネットとかのレビューで答えあ合わせ的に見てみると「そういう考え方・捉え方もあるんだなぁ」と学べることが多い映画だと思いました。
まだ観てないという方は是非観てみてください。
観られた方の感想もコメント欄で教えて頂くと嬉しいです。
では、よい一日を。
see you soon.


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